親の謝罪などさせるべきでも、するべきでもない!です

公開日: 

俳優の橋爪遼さんが、覚せい剤所持の疑いで逮捕されたことから、
昨日、お父様の橋爪功さんが、以下のような謝罪コメントを発表されました。

「この度は、息子の遼の件で、大変なご迷惑とご心配をおかけしますことを深くお詫び申し上げます。
今は突然のことで気持ちが追いついていません。正直話すべき言葉が見つかりません。
本人も大人ですので自らの責任で正しく対処していってほしい、親としてはそれを願うばかりです。
私としてはできれば今後も俳優活動を続けていければと思っています。」

このコメントを拝見して私は3つのことにムカムカしました。

まず一つ目。
お父様の所属事務所を通じてこのコメントが出されたとのことですが、
一体、何故息子が逮捕されたからといって、
事務所は父親にコメントを出させたのでしょうか?
出した方が、印象がよくなるとの戦略でしょうか?

二つ目。
お父様が何故、30歳にもなる息子が逮捕されたからといって、
息子の身代わりとなって謝罪するのでしょうか?

三つ目
まだ逮捕の段階で、なにも分からず、有罪無罪も確定しないうちから、
お父様は何故、「今後も俳優で生きていって欲しい」などと、
息子の人生に踏み込んでいるのでしょうか?

橋爪遼さんが、有罪かどうかも、
ましてや依存症だったかどうかはまだ分かりませんが、
どうあってもそれは遼さん自身の問題であり、
親が一切の尻拭いをすべきではありません。

橋爪遼さんに、謝罪するチャンスも、人生を立て直す機会も、
そして自分を見つめ直す勇気も、
全て選択する権利は遼さんに与えられるべきです。

お父様の功さんがしゃしゃり出て、首を突っ込むべきではないし、
また、周りの大人たちも、自分たちのメリットや評価を気にして行動するのではなく、
あくまでも遼さん自身の再出発に目を向けるべきです。

そしてなんと言っても、この親子の行く末を見守っている日本国民が、
「成人した息子に変わって、親が謝罪するなどおかしい」
「親子は別の人格であり、全く別の人生を生きているのだから、
一蓮托生で非難すべきではない!」
と、物事の本質を見抜いて欲しいと願うばかりです。

依存症者の家族は、依存症の問題で大きな影響を受けます。
世間に隠れるような生活を余儀なくされ、
尻拭いのために、自分たちの人生設計も台無しにしてきました。
その結果、本人は回復のチャンスを失い、何度も同じ間違いを繰り返すこととなりました。

依存症家族が、当事者と一蓮托生になることは、
誰の得にもなりません。

むしろその家庭に、お互いの境界線を踏み越える、
ゆがんだ関係があったのなら、
今こそ、その関係を見直す良いチャンスにするべきです。

功さん息子さんの人生は、息子さんのものです。
あなたは自分の評価を気にして、保身から行動するべきではありません。
また日本の社会も、感情論で表面的なわびなどに固執せず、
社会の好循環を求めていくべきと思います。

先日、ギャラクシー賞を頂いた、薬物報道のガイドライン。
もう一度、ここに掲載いたします。
是非、皆さん今一度ご確認ください。

家族は、謝罪ではなく、回復のためにどう行動すべきか学ぶべきです。
ましてや、薬物事件以後、当事者がどう生きていくべきかを、
親が示唆すべきでもありません。
皆様に再読頂けたら、幸いです。

≪薬物報道ガイドライン≫
【望ましいこと】
▼薬物依存症の当事者、治療中の患者、支援者およびその家族や子供などが、
 報道から強い影響を受けることを意識すること
▼依存症については、逮捕される犯罪という印象だけでなく、
 医療機関や相談機関を利用することで回復可能な病気であるという事実を伝えること
▼相談窓口を紹介し、警察や病院以外の「出口」が複数あることを伝えること
▼友人・知人・家族がまず専門機関に相談することが重要であることを強調すること
▼「犯罪からの更生」という文脈だけでなく、「病気からの回復」という文脈で取り扱うこと
▼薬物依存症に詳しい専門家の意見を取り上げること
▼依存症の危険性、および回復という道を伝えるため、回復した当事者の発言を紹介すること
▼依存症の背景には、貧困や虐待など、社会的な問題が根深く関わっていることを伝えること

【避けるべきこと】
▼「白い粉」や「注射器」といったイメージカットを用いないこと
▼薬物への興味を煽る結果になるような報道を行わないこと
▼「人間やめますか」のように、依存症患者の人格を否定するような表現は用いないこと
▼薬物依存症であることが発覚したからと言って、その者の雇用を奪うような行為をメディアが率先して行わないこと
▼逮捕された著名人が薬物依存に陥った理由を憶測し、転落や堕落の結果薬物を使用したという取り上げ方をしないこと
▼「がっかりした」「反省してほしい」といった街録・関係者談話などを使わないこと
▼ヘリを飛ばして車を追う、家族を追いまわす、回復途上にある当事者を隠し撮りするなどの過剰報道を行わないこと
▼「薬物使用疑惑」をスクープとして取り扱わないこと
▼家族の支えで回復するかのような、美談に仕立て上げないこと

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