段階別ギャンブル依存症対策です

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最近、マスコミ、政治家、一般市民の方々などなど、
依存症問題の関係者以外の方とやりとりさせて頂くことも多いのですが、
その過程でなるほどなぁ~と思うのは、依存症対策には様々な段階があって、
それぞれに必要な措置を講じていくのですが、
その段階があまり理解されていないのだなぁと分かってきました。

ものすごく大ざっぱに分けると、単に「ギャンブル等依存症対策」と言っても、
こんな風な段階に分かれているんですね。
もちろん実際はこんなきっぱり分かれているのではなく、
もう少しグラデーションになっているとご理解下さいね。

段階別

でもって、我々が関わっている人達は、この頂点にいる、
多重債務、家庭不和、児童虐待、犯罪、自殺などに直結するような、ハイリスク群です。
ピラミッドの頂点のギャンブル依存症群のうちでも、上半分に分類される人たちですね。
現在の所、我々の様な民間団体以外、ここに関わる手立ては殆どありません。

で次が問題あるギャンブラー。
ここに医療、行政などが関わっています。
もちろん一部依存症に移行している人もいますし、
重複障害などなかなか重篤な案件もありますが、
少なくとも「自分の足で、診察やプログラムに通おう!」
という意志の力がまだ働く人達です。

そして次に来るのが愛好家ですね。
お小遣いの範囲で、長年ギャンブル楽しんでいま~す!という
な~んの問題もない、ギャンブルを楽しめる人達です。

そして残るは全くギャンブルはやりません!という群。
ここに青少年が含まれます。

で、ですね今若干始まりつつある対策というのは、
殆どが「問題あるギャンブラー」に対する対策なんですね。
例えば、
・やばいな・・・と思ったら相談窓口にお電話を!
・家族に連れられて、診察に行きました!
・「安易な借金整理をしないようにしよう」と関係各所に啓発を!
こんな感じですね。
もちろん、これらが始まったことは画期的なことです。

だからカジノをやるために始まった国からの圧力で、
ギャンブル産業が始めた対策というのは、大体が相談電話の設置なんですよね。
やりやすいし、紹介するだけですからリスクもありません。
あとは多少、家族・本人排除ののような入口制限が始まっていますが、
実際はシステム化されておらず顔写真でチェックなどと言っているので機能してないです。

そこから一歩進んでいるのが、医療・行政の窓口。
相談に来た人に診察や対応をしてくれているわけです。

あと対策がやりやすく進んでいるのが、愛好家とやらない群とそこに含まれる青少年。
ここには予防教育メインで、すでに始まっています。
また出玉規制などは、愛好家が次に移行していかないように考えられていると言えますが、
逆に言えばそれで離れていったのもまた愛好家群となる訳ですね。

で、問題なのは、我々がやっているハイリスク群の対策。
これが一向に進んでない訳ですよ。
いやむしろ、その下の問題あるギャンブラーに対する対策が色々出てきたり、
まだ問題が起きていない人に向けた予防教育が始まったことで、
目くらましのように、まるで依存症対策が進んでいるかのように見えている訳です。

でもそれはどちらかというと、依存症前段階の人のための対策なんですよ。
もう依存症になっちゃって、しかもかなり進行して、
犯罪や死に直結している人達の対策が全然ないんです。
で、そこのノウハウを持っているのって結局家族なんですよ。

そういう家族が集まって、「なんとかしなきゃ!」と走り回ってきたわけです。
それで本人に介入することをやり始めたわけです。
私たちが、繋がった頃は「手放せ!」一辺倒で、その先の介入がなかったために、
問題がなかなか解決しませんでした。
そして家族も、先があまりに見えないので、「手放せ」と言われても、
手放せなかったり、どう手放せばいいのか、方向性が分かりませんでした。

インタベンション=介入というのは、本人への直接介入ばかりが注目されますけど、
あれは正確には家族介入であって、
「とにかく少なくとも家族だけは助けよう!」という仕組みです。

このハイリスク群の介入というのは、本人がハイリスクなだけでなく、
それに関わる支援者もハイリスクです。
死が身近ですし、犯罪に至って逮捕される人などザラです。ゴロゴロしてます。
だからこそ家族との信頼関係がないとできません。

行政や医療といった立場ある人達に、ここの部分が果たしてできるようになるのか?
という思いがあります。
ここがアルコールや薬物とギャンブルが大きく違うところだと思います。

薬物は犯罪と直結していますが、多くは被害者なき自己使用です。
またアルコールの介入は、まず身体を治すために病院へ繋ぐことだったりするわけですよね。

でもギャンブルの犯罪には必ず被害者がいます。
運が悪いと、強がついてしまって、窃盗から強盗になります。
そうなると懲役は免れません。
私は、懲役7年、8年などという、重篤な案件の裁判員裁判にも出廷した経験があります。
「手放す」と安易に言ったとしても、その結果はとんでもなく重篤なものになる可能性があります。
被害総額が数千万なんてケースも割とあります。
もちろん犯罪も多いですが、死も多いです。

そこを我々家族だけで走り回っていてももう限界です。
だからある程度のところまで地域連携で、
例えば、警察から回復施設へといった支援に繋げていく仕組みが欲しいし、
家族相談から家族会や自助グループに、もっと繋がる確率を高める工夫やスキルアップをして欲しいです。
そして何よりも、安定的に活動できるように、
ギャンブル産業から予算を拠出する仕組みが欲しいです。

今は、ギャンブル産業が儲けるだけ儲けを持っていって、
最悪の尻拭いを我々が身銭を切ってやっている仕組みです。
これは絶対おかしい!と思っています。

対策といっても、このように様々な段階があります。
我々としても、もっと分かりやすくお伝えできるよう、
スキルを磨いていかねば!と思っています。

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現在国内の推定罹患者320万人(2017年厚労省)のギャンブル依存問題。
日本でもギャンブル依存症対策の導入を!

[田中紀子の著書]
三代目ギャン妻の物語(高文研) ギャンブル依存症(角川新書)

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