自助グループ側の課題です

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ブログでちょくちょく、医療者や援助職の皆様に対して、
自助グループを理解して欲しい旨書いてますが、
今日は自助グループ側の課題について書きたいと思います。

ご存知の通り、ギャンブル依存症の自助グループは、
アルコール薬物に比べたら、格段に規模が小さいです。
で、なぜこんなに差があるのか?
私は、回復施設に関わっている経験上、
アルコール薬物の仲間と、ギャンブルの仲間の何が違うかわかるので、
自分の見解を書きたいと思います。

まず一つ目としては、自助グループのメッセージを運ぶ機会が格段に少ない事があります。
これは、そもそもこれまで医療による依存症治療と言えば、
そのほとんどがアルコール依存症をさすものであって、
薬物ですら、松本先生のいらっしゃる国立精神・医療研究センター他数カ所しか扱っていません。
まして、ギャンブルなんてこれまで「薬使えないし、儲からないのでやらない」と言われてきました。
そりゃそうです。身体はめっちゃ丈夫ですからね、ギャンブラーは。

なので、アルコールの皆さんがせっせと病院メッセージを運んでいらっしゃるのに対して、
ギャンブルなんか、そんなことやらせて貰える機会が殆どありません。
古くからギャンブルでの入院文化?があった、中国、九州地方の数カ所など、
昔からギャンブルを扱って下さっている病院でわずかにメッセージ活動があるくらいです。

また、刑務所メッセージや保護観察所など、
特に刑の一部執行猶予制度が始まって以来、司法との連携が強くなった薬物に比べて、
ギャンブルは全く連携がありません。
新潟の刑務所の田村先生が唯一と言っていいくらい、ギャンブルに心を砕いて下さるので、
私がせっせと新潟で刑務所プログラムをさせて頂いていますが、
そもそも罪名とダイレクトに結びつかないギャンブルは、まだまだ把握すらされていないので、
司法と連携したメッセージ活動も実現していません。

そして、自助グループのメンバーが、こういったメッセージ活動をそもそも知らないので、
「メッセージを運ばせて欲しい」という、
自助グループのステップ12にあたるメッセージ活動が
あまり盛んではないという問題があると思います。

次に、ギャンブラーの殆どがサラリーマンであるという問題があります。
依存症回復施設と言えば、マック・ダルクさんが有名ですが、
ギャンブルは回復施設も国内に数カ所しかありません。
これは逆に言えば、施設がなくても自助グループだけで回復できる人の数も多いということだと思います。
私自身も、ギャンブルの回復施設が、国内にそんなに沢山必要だ!とも思っていませんが、
ただ、そうなると回復施設のスタッフ数が圧倒的に少ないという現実があります。

また、アルコールで繋がってくる人は、高齢化していると聞きますが、
ギャンブルで繋がってくる人は若いです。
最近特に若くして繋がってくる人が増えました。

これは昔の親に比べて、今の親たちが貧乏なこと、
そもそも日本の景気が悪く給料が安いこと、
サラ金の総量規制が出来て年収の1/3までしか借り入れができなくなったこと、
それと、ギャンブル依存症が注目され、気がつく人が増えたことがあげられると思いますが、
当事者、家族共にまだまだ働き盛りです。
そして、借金が沢山あり、公租公課なども滞納しているため、
回復しながらバリバリ働かなくてはなりません。

回復の観点から言えば、若くして繋がれることは非常に望ましいことです。
ただこの状況だと、やはり自分が週に1回以上ミーティングに行くことで精一杯です。
せいぜい頑張っても時々グループのイベントをやるくらいしかできません。

なので、アルコールの様に定年退職して時間がある高齢者もあまりいませんし、
ダルクさんのように、昼間動ける回復者スタッフもめちゃくちゃ少ないという現実があります。
なので、そもそもメッセージ活動ができる時間的余裕がありません。

またダルクさんの様に、施設のイベントでみんなで車に載って、
あっちゃこっちゃの会場に行く!ということも、
施設がそもそも少ないので、わずかにグレイスロードあたりがやっていますが、
ごく限られているわけで、地方の人数がなかなか増えないミーティング場を、
フォローしていくということもできず、
各地でミーティング場が潰れてしまっているという現状があります。

この辺の問題は、精神保健福祉センターの皆さんにも連携して頂きたく、
是非元北海道の精神保健福祉センターの所長でいらした、田辺等先生に学んで頂けたらと願っています。
田辺先生は現在もなお、地域にガンガン自助グループを立ち上げるべく、連携して下さっています。

そして3つ目の問題は、ギャンブラーの殆どが人づきあいが苦手で、
面倒見が悪い・・・という大問題があります。

これは肌感覚でしかないのですが、これまで3つの施設立ち上げに連携して来て、
実感し、一緒に立ちあげてくれた、薬物の施設に関わってらした方々もおっしゃっているので、
多分間違いないですが、ほんとギャンブラーはそっけないです。

そもそも一人で、誰にも邪魔されず何も考えないで済むパチンコをしていたい・・・
これがギャンブラーですから、そういう特徴もうなずけるのですが、
同行し繋げて下さった、援助者の皆さんからも
「自助グループに繋げても、声をかけてくれるメンバーがいなくて、ポツンとしていて可哀想だった。」
という声を度々聞き、私もとても残念に思っています。

また、アルコール・薬物に比べて、サービス活動が格段に少ないので、
連携しようとしてくれる、熱心なセンターさん他がメールなどで連絡しても、
「返事が来ない」「どこに連絡すればいいかわからない」
という話は腐るほど聞いていて、申し訳ない・・・と何故か私が恐縮してしまうという場面が度々あります。
その場合はもう私が直接、グループの知り合いに、
「センターに連絡してあげて下さい~」なんて伝言係をさせて貰ったりしています。

ホントこう言う話を聞くとですね、
自助グループメンバーが、センターなどに顔をだして、
Face to Faceで繋がることは、非常に大切だな~と実感しています。
この辺の、人付き合いの悪さ、面倒見の悪さ、そっけなさというのが、
ギャンブルの課題なのでは?と思っています。

このように、まだまだ課題山積みのギャンブル依存症。
やることがいっぱいあって、やりがいがあるというかなんというか・・・
実に楽しみです!

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現在国内の推定罹患者320万人(2017年厚労省)のギャンブル依存問題。
日本でもギャンブル依存症対策の導入を!

[田中紀子の著書]
三代目ギャン妻の物語(高文研) ギャンブル依存症(角川新書)

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