自分像のかい離現象です

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自分自身が回復してみて、何故依存症者が生きにくいのか、
ホント良くわかってきた気がするので、今日はそのことを書きたいと思います。

施設に入寮してくる人、スタッフになる人、そして家族の仲間達、
なによりも自分自身の回復前とその後を振り返ってみて、
やはり長い間依存症に巻き込まれていたということは、
その間、学べたはずの社会性や仕事のスキルなどなど様々な知識や経験が
抜けおちているんだなぁと思いますね。

だって考えてみりゃ、そりゃそうですよね~。
他の人が、勉強している学生時代からギャンブル始めてのめり込んでれば、
他者とはそれだけで大きく水をあけられるわけですよ。

家族だってそうですよね。
働き盛りの時に、家族の依存症問題で力が奪われているんですから、
良い仕事なんかしてる訳がありません。
ギャンブル依存症の家族でありながら、専業主婦・無職なんてのもゴロゴロいる不可思議さ。
逆に、父親族は嫌なことから目をそむける恐れの強さと、コミュニケーション下手。
こちらの方は、仕事を言い訳にしていますが、根っこがこんな感じだと推して知るべしです。

で、本当はできるはずだった経験が、依存症によって大きく失われている訳ですよ。
だから本当は不安でならないんですけど、
依存症という病気は、その不安に対して、
もっともらしい理由づけがいくらでも湧いてくる病気じゃないですか。

本当は、自分の知識不足、経験不足から起きている問題も、
自分のコミュ二ケーション能力の欠落から起きてる問題も、
「周りがバカだからだ」
「給料が安いからだ」
「あんな親だからだ」
と、いろんな言い訳をしてきたわけですよね。
そして「本当の自分はやればできる」って思ってる。

つまり他人の棚卸しか、ない訳ですよ。
それは性格のせいじゃなく、そういう病気な訳ですから。

で、回復して、仕事に向き合った時に、初めて
「あぁ、人生とは仕事とは家庭とは、こういうものなのか!」
と分かってくるわけです。

で、回復した脳というのは、言い訳が効かなくなってくるわけですよ。
で、確かに環境要因ってのも実際ありますよね。
バカな上司もいるだろうし、ダメな会社もある。
しょ~もない親だってもちろんいるわけですよ。
だけど「とは言え、自分にできることはなんだろう?」
と常に自分の側の変えられることに向いていくわけですよ。
つまり自分の棚卸が習慣になってくる。

これは実際楽な生き方なんですよ。
だから色んなことが経験できたりして、自分が急成長しちゃうんですよね。
その時が一番楽しい。いわゆるピンクの雲ですよね。

だけど、すぐに壁にぶち当たっちゃう。
だってそうですよね、そもそも経験値が少ないんだから、
すぐになんでもやったことのない事、未知との遭遇になっちゃいますよ。

そこでまた依存症に戻っちゃう人がものすごく多い。
これは若い人は圧倒的にそうです。
何故なら経験値があまりに少ないから。
自分なんか何者でもない、ただの無知なガキなんだ!
ってことすら知らないんですよ。

しかもまわりは年相応に自分をみるじゃないですか。
23歳、25歳、28歳、32歳、35歳の人としてですよね。
でもホントは18歳で社会経験が止まってんですよ。
若ければ若いほど、この経験不足はダメージだし、
でも、学校生活でなまじ勉強ができたとかスポーツができたなんていうと、
その成功体験の方が、身近であり、自分の唯一の経験だったりするんですよ。

そうするとその「優秀な自分像」が出来あがってて、
本当の経験値のない、依存症者の自分ってのが今の自分なんだよ!
ってことが受け入れられずに、認知のゆがみがでちゃうんですよね。

自分は優秀なはずなのに、仕事で結果が出せない・・・
自分は優秀なはずなのに、仕事がさっぱりわからない・・・
こういう乖離ですよね。

で、不安になる。
そうするとあっという間に、他人棚卸現象が始まって、
依存症に逆戻りしちゃうんですよね。

私なんか今めっちゃくちゃ思ってますからね。
だって、回復したこの10年で、自分で言うのもなんですけど、
急成長してんですよ私。

それまでただのOLで、言われてこと最低限やってりゃ給料くれたし、
最期の方は、依存症で潰れてる訳じゃないですか。

ところが自分の頭で考え、足で開拓し、
同じ問題を抱える人を助けていく人生・・・なんていう未知との遭遇が始まった訳ですよ。
そうすると最初はいいですよ。
自助グループ通って、プログラム伝えてってそりゃ楽しかったです。
でもそっからどんどんどんどん成長していくわけじゃないですか。
できること、やれることが増えてくる。

そうすると今なんか思う訳ですよ。
勉強しておけばよかったな・・・
もっと色んな経験積んでおけばよかった・・・
もっと教えてもらえばよかった・・・
後悔しかないっすよ。
成長すると壁にぶち当たっちゃうから。

だって40まで不良主婦だったのに、
法律もわかんないのに法律作ったり、
政治なんか興味なかったのに、政治に関わったり、
作文なんか嫌いだったのに、文章書いたり、
IT音痴なのに、発信しなくっちゃならなかったり、
論文なんか縁がないのに、論文の読み書きしなきゃならなくなったり、
英語ずっと1だったのに、国際会議に出たり・・・

人のこと批評して、出来てないところに文句言ってる時は楽ですよね。
しかも自分だったら、もっと上手く完ぺきにできると思ってたりするんですから。
ず~~~~~っとそうやって、自分像が実像と乖離して生きてきた人間なんですから。

でも私はよ~くわかったんですよね。

依存症で人生のある時期欠落しているのが自分。
だから人より沢山、弱点と欠点を持っている自分。
だけど、依存症から回復して、等身大の自分に気がつけた自分。
そして、助けの求め方と、欠点と弱点を周りの人に補って貰うやり方がわかった自分。

ってのが今の自分なんです。
そりゃあもう分かんないことだらけで、ホントきついことが増えましたよ。
すっごく苦しい・・・と思うことも多いです。
だけどもう昔にはもどれないです。

天に昇っていく、はしごを登り続ける感じですね。
登ってくと、高さも出てくるし、空気も薄くなって怖いじゃないですか。
苦しいし、疲れてくる。
でも、どんどん見た事ない景色が現れるから面白いんですよ。

で、時々下をみるわけですよ。
下をみると怖さがますけど、もう絶対あそこには戻りたくない!
あんな依存症の世界には戻りたくない!って思うんですね。
上に登るのは、苦しいけど、でも面白い、もう落ちたくないってね。

で、私なんか必死に、はしごにしがみついてるけど、軽々登ってる人とか、
ちょっとそこで一休みしたり、仲間と楽しんでる人もいる。
「いいなぁ」「あぁなりたいな~」って憧れの人が沢山いるわけですよね。

10年たって、依存症からの回復って簡単じゃない!ってつくづく思います。
壁にぶち当たる度に、離れていった人沢山見てきました。
その人達は、楽な道を行ったようだけど、全然楽じゃないし、楽しそうでもない。

私は、回復し続けて、等身大の自分が受け入れられるのに10年以上かかりました。
その間、なんとかギャンブルと買い物を発症しないで済みましたけど。
理想像と実像の乖離。
これ本当に厄介な依存症者の問題だと思います。

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現在国内の推定罹患者320万人(2017年厚労省)のギャンブル依存問題。
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三代目ギャン妻の物語(高文研) ギャンブル依存症(角川新書)

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