「薬物報道ガイドライン」その後・・・です

公開日:  最終更新日:2017/06/15

本日、荻上チキさんのラジオ番組「Session-22」で、
「薬物報道ガイドライン」策定からこの5カ月の動きについて振り返る番組があり、
私も電話で出演させて頂きました。

改めて、この5カ月を振り返ってみて、
ガイドラインで何が変わったのか?
私なりの感想をまとめてみたいと思います。

本年1月に、この薬物報道ガイドラインを作成して、
こんな風にまとめてみたわけですが、

【望ましいこと】
◆薬物依存症の当事者、治療中の患者、支援者およびその家族や子供などが、報道から強い影響を受けることを意識すること
◆依存症については、逮捕される犯罪という印象だけでなく、医療機関や相談機関を利用することで回復可能な病気であるという事実を伝えること
◆相談窓口を紹介し、警察や病院以外の「出口」が複数あることを伝えること
◆友人・知人・家族がまず専門機関に相談することが重要であることを強調すること
◆「犯罪からの更生」という文脈だけでなく、「病気からの回復」という文脈で取り扱うこと
◆薬物依存症に詳しい専門家の意見を取り上げること
◆依存症の危険性、および回復という道を伝えるため、回復した当事者の発言を紹介すること
◆依存症の背景には、貧困や虐待など、社会的な問題が根深く関わっていることを伝えること

【避けるべきこと】
◆「白い粉」や「注射器」といったイメージカットを用いないこと
◆薬物への興味を煽る結果になるような報道を行わないこと
◆「人間やめますか」のように、依存症患者の人格を否定するような表現は用いないこと
◆薬物依存症であることが発覚したからと言って、その者の雇用を奪うような行為をメディアが率先して行わないこと
◆逮捕された著名人が薬物依存に陥った理由を憶測し、転落や堕落の結果薬物を使用したという取り上げ方をしないこと
◆「がっかりした」「反省してほしい」といった街録・関係者談話などを使わないこと
◆ヘリを飛ばして車を追う、家族を追いまわす、回復途上にある当事者を隠し撮りするなどの過剰報道を行わないこと
◆「薬物使用疑惑」をスクープとして取り扱わないこと
◆家族の支えで回復するかのような、美談に仕立て上げないこと

ご一読頂ければ、すぐにお分かり頂ける通り、
なかなかまだまだハードルは高いなぁという感じですよね。

つい最近も、元KAT-TUNの田中聖さんと橋爪遼さんの薬物報道があったので、
主に、その二つの事件を中心にこのガイドラインと照らしあわせてみたいと思います。

まず、この二つの事件
「病気からの回復」という観点での報道、
相談窓口の紹介や、専門家の意見を取り上げるということは、
ほぼ皆無でした。

これまで、薬物報道がでると、松本先生をはじめとした、
専門家の意見や、ダルクのスタッフの方などがよく番組にでていたので、
そこはむしろ後退したのかもしれません。

ただ、白い粉や注射器などの画像を流すことは俄然減ったと思います。
今回、若干乾燥大麻の画像が流されましたが・・・

でも、やはり一番残念だったのは、
芸能人の逮捕に、芸能人が叩きまくるというこの風潮ですね。
なんとかならないものなのでしょうか?

・バカ
・甘えてる
・情けない
・根性がひんまがっている
・人に迷惑をかけていることがわからないのか!

などというコメントが頻繁にながれました。
こういうののしりって、なんの役にもたたないのに、
何故繰り返されるのでしょうか。

例えば、海外だと、同じ芸能人がリハビリ施設への入所を勧めたりしていますよね。
日本の芸能人は、そういう知識がないのでしょうか?

そして、最近の一番の問題は、
ラジオで松本先生もおっしゃってましたが、
不起訴とか処分保留など、罪にならないケースでも、
大々的に報道がなされてしまうことだと思います。

これASKAさんの時に大問題になりましたけど、
今回の田中さんの件もそうですよね。
この辺、警察の発表のタイミングについても、
気をつけて頂けないものなのでしょうか?

ただ私、本日も申し上げましたが、
ガイドライン以降、一番変わったことをあげるとするならば、
それはチキさんのラジオのリスナーの方、
Twitter民などの応援ががぜん増えたことですね。

今まで、薬物問題など発信しても、
コテンパンに返り討ちにあうばかりで、
私など、そういうツイートをせっせとミュートするのに、
非常に忙しかったものです。

ところが、今回はガイドラインを照らし合わせて下さり、
守られていない報道を指摘して下さる方などもいらして、
そういう一般の人達の応援がものすごく心強く、
また、有難く思いました。

芸能人なんて、むしろご自身の保身にがんじがらめで、
変われないのかもしれないですよね。
新しい流れを敏感に感じるセンサーも働かないのかもしれないし。

なんせ現代では、テレビなんて一番遅れてますもんね。
時代に全く敏感じゃないですから、
今の若者たちって、TVなんてホント見なくなってます。

そう考えると、一般の人の方がよっぽど柔軟だし敏感で、
この世の中って、意外とボトムアップなのかもしれない・・・
って希望を持っています。

一般の人の中で、敏感な人達からどんどんに変わっていって、
TVが後追いしてくるのかもしれませんよね。

なんでもそうですけど、一気に変わることってなかなかないけど、
じわじわと、意外な所から助っ人が現れて、
結果が出てくる・・・そう信じてこれからも発信し続けたいなぁと思いました。

応援して下さる皆様方、
今日も有難うございました!

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