マッチポンプが世界のスタンダードです

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IR法案が審議入りし、本日衆議院を通過するであろうことから、
にわかに「ギャンブル依存症」が大々的に取り上げられることとなりました。

一般社会の皆様も、突然のことでこれまでギャンブル依存症の事など、
気にしたこともなかった・・・という方々も、否応なく耳にし、
初めてこの問題について考える羽目になった、という方もいらっしゃるかと思い、
今日から、日本のギャンブル依存症問題について書いていきたいと思います。

まず、現在ツイッターなどで、よくみかけるのは、
「カジノを作って、依存症対策をやるなんてマッチポンプだ!」
というご意見です。
一般の皆様方がそう思われるのは、無理もなく有難いことですが、
実は、それが世界のスタンダードです。

例えば、こちらの資料にある、
カナダの場合を見て頂いてもお分かり頂ける通り
州ごとに売り上げの何パーセントかを、
チャリティー費、ギャンブル依存症対策費、リスポンシブルゲーミング費
に振り分けると書いてあります。
Canadian Gambling Digest 2013-2014 (Canadian Partnership for Responsible Gambling. August, 2015. )

簡単な粗訳をUPしておきますが、
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リスポンシブルゲーミング費というのは、この資料の見解では、
「地域社会やギャンブルの供給者、政府等がギャンブルに関連するリスクを生み出す責任を共有し、
ギャンブル依存症を予防または最小限に抑える環境を作り出し、促進し、
ギャンブルに関する地域社会の懸念に対応するもの。」とあります。

それにしてもすごい金額ですよね。
単位はカナダドルですから、為替の変動があるとしても現在の1カナダドル=およそ85円で計算すると、
カナダ全体でおよそ70億円位、依存症対策費を拠出しているってことになりますよね。
その他に、リスポンシブルゲーミング費が出されていて、合計するとおよそ97億!
おまけにカナダの人口は、大体3516万人と日本の2/7ですよ!
これだけやれば、カナダの依存症罹患率はかなり低いだろう・・・と調べたところ、
案の定、カナダのギャンブル依存症罹患率は、
2016年度に出されたMGMリゾーツ・インターナショナルの調べでは、0.8%とのことでした。
日本のギャンブル依存症罹患率4.8% 推定罹患者536万人とは大違いですね。

しかもこのカナダの仕組みを見るとですよ、
チャリティ費よりむしろギャンブル依存症対策費が多く割かれていますよね。
それに対し日本の公営ギャンブルって、売り上げの一部を福祉費にはまわすけど、
このギャンブル依存症対策費、リスポンシブルゲーミング費には、
まわされていないんですからね。変だと思いませんか?

最近は、日本財団さんは福祉分野の助成で大活躍してますけど、
それこそ、まずはギャンブル依存症対策に大幅に割くべきじゃないでしょうか。

その上、日本には24兆円の市場規模を誇る、パチンコがあるのに、
そこに対して、ギャンブル依存症対策費の拠出を義務付けられていないって、
あまりにも無責任過ぎやしないでしょうか。

で、そのツケは、税金にまわされるわけですよ。
例えば、ギャンブル依存症が進行してしまって、
働けなくなってしまった・・・という人の生活保護費や、
夫がギャンブル依存症で離婚せざるをおえなかったという
シングルマザーに対する母子手当。

さらには、犯罪を犯せば裁判費用から収監費用、
もちろん被害者に対するケア他、
自殺、失踪、うつ病などなど、様々な問題がおこり、
それら全てを税金で賄っている訳です。

これだけ財源不足の日本で、ギャンブル依存症問題によって、
どれだけ多くの財源が使われていることか・・・
それらは利益を享受している産業側が拠出することが、
ある意味当たり前の社会ではないでしょうか?

ですから、カジノができたら、その売り上げの一部で、
ギャンブル依存症対策費を拠出するという理屈は、
むしろやっと世界基準に追いついたのであり、
マッチポンプというよりは受益者負担だと思っています。

そして、これまでギャンブル依存症問題のために使われていた税金は、
その分を是非、子育て他可及的速やかに取り組まねばならない、
別の政策のために使って頂きたいと考えています。

ギャンブル依存症はギャンブルをやらなければならない病気。
だったら、「ギャンブルをやって欲しい!」と、
一生懸命呼びこんでいる産業側が、
責任を負担することが筋じゃないでしょうか。

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現在国内の推定罹患者536万人(2014年厚労省)のギャンブル依存問題。
日本でもギャンブル依存症対策の導入を!
ギャンブル依存症対策を求める10万人署名プロジェクト

[田中紀子の著書]
三代目ギャン妻の物語(高文研) ギャンブル依存症(角川新書)

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