巷を席巻している家族プログラムについてです

公開日: 

2日間、ギャンブラーと家族の金銭プログラムについて書きましたが、
本日は、行政、医療の家族プログラムをどうしても改善して頂きたく、
渾身の想いを込めて書きますので、どうか多くの方にご一読頂けますように。

最近「クラフト」と名のついたテキストから抜粋された、
家族プログラム一色になっており、我々は大変懸念しております。

というのもこれは本家本元のクラフトの翻訳本が出たからだと思いますが、
では、本家本元のクラフトとはどうなっているか?と言えば、
ものすごく詳細に作られた、家族が自分の人生を選択できるようになっているプログラムになっており、
その先には当事者をCRAというプログラムに繋げるという目的があるのだそうです。

で、今巷で「クラフト」と呼ばれているのは、この抜粋な訳です。
そして当事者を繋げるCRAはありません。
しかし本家本元のエッセンスが色濃く残されているために、
センター等で行われている家族プログラムが、
今や「当事者を回復させるために、家族がコミュニケーションを学びましょう!」
という状況になってしまっているんです。

これは「本人の回復は本人に任せよう」という、
これまでの自助グループの学びと、真逆になっており、
自助グループに来るビギナーさんの間で、すっかり混乱が起きています。

また自助グループが行ってきた、底つき理論がすっかり悪者扱いされていて
「今までのやり方じゃダメ!」「底つきでは手遅れ」という風潮になっており驚いています。
これはあまりに家族の自助グループが行ってきた事に対し、無知すぎる発言です。

我々が「手放す」と言っているのは、「底つき」を「底上げ」するためであって、
「本人が底をつくまで何もしない」ということでは全くありません。
そんなこと言ったら、みんな死んじゃうじゃないですか!
そうではなく、なるべく浅い時点で底がつけるよう底上げし、
なおかつ時々タイミングを見計らって、回復の提案も声かけしています。

それでもなかなかうまく行くもんじゃないですから、
家族はまず自分の人生を取り戻そう!
場合によっては、離婚といった選択もありだよ。
それは見捨てることなんかじゃない、自分を大事にしていいんだよ!
これが家族の自助グループのメッセージであり、
家族が癒され回復する事を使命としています。

ところが、今じゃすっかり「本人を回復させる役割」
これを担わされていて、これでは家族は囚われるし、
家族の傷ついた気持ちはどうなるんですか?
一体どこで癒され、どこで自分の人生を取り戻すのでしょうか?

それと、クラフトはもともとアルコールの家族向けに書かれていたと思われ、
ギャンブルの家族に対しては、あれでは全然不足であり、
また、あてはまらない所もあります。

いきなりプログラムがコミュニケーションスキルから入っていますが、
それは家族にとっては、自殺行為です。
家庭内オレオレ詐欺の相手に、コミュニケーションをとりましょう!
から入っていたのでは、多くのものを失ってしまいます。
場合によっては、当事者が死んでしまいます。
ギャンブラーの家族に必要な家族プログラムの順番は以下に記すようにお願いしたいです。

まず、いちばん最初に来るプログラムは、緊急対処プログラムです。
ギャンブラーというのは「お金」に直結しているのです。
そしてお金というのは家族にとっても生命線です。
この自分と子供達、もしくは老後資金などを守る対策をあれこれ教えねばなりません。
つまりこんな感じです。

〇家庭内オレオレ詐欺対策
・金目のものは、貸金庫に入れ、引き出しなどに金銭、商品券などは一切入れない。
・暗証番号は、夫に絶対にわからないものにして、コロコロ変える。
(これは妻がお風呂に入っている際に、キャッシュカードを抜き取り下されてしまうため)
・子供を傷つけないよう、子供のお年玉、貯金箱のお金は必ず銀行へ入金。
・生命保険、預貯金、可能な限り当事者から名義変更しておく。
最低限、これは一番最初に伝えるべき事です。

そして次に大切なのは、自殺未遂と失踪が起きている場合の対処法です。
ギャンブラーは自殺率は高いです。油断がならないのはこんなケースです。

〇自殺企図、自殺念慮、失踪に対する対処法
・これまで自殺未遂を繰り返している場合は、医療保護入院、措置入院を検討する。
・失踪はよくある。数日で帰ってくる事が多いが、失踪したらためらわず捜索願を出す。
・この時に、もし横領事件などを起こしていたら「死ぬかもしれない」と大げさに警察に伝えるようにレクチャー。
・また失踪届けを出す時は、ギャンブル依存症であることは必ず伝え、車のナンバーと写真を持って行く事。
・子供たちが動揺する。子供たちのケア、どんな風に言葉をかけたらいいかなどを教える。
※警察がやる気なく動かないようなら当会に連絡を!必ずやる気にさせてみせます。
死なないだろうと思う人が、簡単に死にます。自殺未遂、失踪をあなどらないで下さい。

また、最近流行りの、家族プログラムには「暴力について」と言う項目はあるのですが、
(結構それも生ぬるい事が書いてあって驚きます。あれ完全に暴力に敷居の低いアメリカのプログラムですよね?
我々なら、速攻で、さっさと、うまく逃げろ!ですし、場合によっては仲間が手助けして逃がします。)
「死ぬ」とか「犯罪を起こしてやる!」という脅しに対する対処は書いてません。
しかしギャンブラーに多いのは圧倒的にこちらのタイプです。
「酩酊状態」はないので、むしろ暴力は少ないです。
おとなしくていい人で、ギャンブルだけが問題ってな人も多いのです。
ところが今流行りのプログラムは、完全にアルコールのパクリなので、ギャンブルの家族目線になっていません。

〇「死ぬ」「犯罪を起こしてやる!」という脅しについて
※上記の自殺や失踪の対応との違いは難しいのですが、この辺は職人芸のようになってきます。
・今まで本当に自殺未遂等があったか?犯罪を犯した事があったか?ということを家族に振り返って貰う。
・今まで一度もないのであれば、リスクはゼロではないことも説明したうえで、脅しに屈しないことを勇気づける。
・脅しがひどい場合は、とりあえず短期間でいいので、家族をウイークリーマンションやビジネスホテルなど、
サクッと入れるところに非難する事を提案する。
・家を出てくる時に「『困った時はここへ電話をして。相談にのってくれるから』と書き置きを残しておいで!」
と言って、支援者の電話番号を伝えさせる。そうすると家族も安心して、思い切って家を出てこられます。
行政医療が難しければ当会の電話番号を!連携します。
と、このくらいの事は伝えて欲しいです。

〇借金の行く末や、借金の詳しい知識
・第一段階のプログラムでは借金の様々な知識をレクチャーしてあげましょう。
※例えば、督促状がくると家族は動揺します。本人が同居していないのに通知だけ受け取っているご家族もいます。
そんなもんは受け取り拒否すればいいのです。封筒に赤字で「本人行方不明」「受け取り拒否」と、
でっかく書いて、ポストに入れればOKです。こういう小さいことでストレスはグン!と減ります。
・借金は、連帯保証人じゃない限り、家族が支払う義務がない事。
・ブラックリストなんか5年で消えること。
・闇金の対処法。
・家を出す時にアパートの保証人にならない方法。
・友人知人に「家族に返して欲しい」と詰め寄られたらどうするか。
・財布を落としたなどと言われたら?
などなど驚いた事に、我々が新しい仲間が来たら当然レクチャーすべきこまごまとした豆知識が、
「ギャンブルの家族プログラム」と銘打っていながら一切入っていないのです。
これでは、安心して、また余裕を持って当事者に対処することなどできません。

以上、まず最低でもこのくらいの実践的な知識をつたえるのが第一段階のプログラムです。
ところが、あっちゃこっちゃのセンターや医療でやってる家族プログラムの、
どっこにも「ないないないないないないな~い!」ってこういうこと一切書いていないんです(驚愕!)

そして「コミュニケーションを変えてみましょう」なんていうプログラムを最初からやって、
本人の反応が多少変わったかどうかで一喜一憂して何年も過ごしているんです。
信じられないです!真綿で首をしめるような、飼い殺し状態ですこれでは。

また他にも離婚したっていいんです。
でも、離婚する人にも家族プログラムは必要です。
ギャマノンは、離婚後も元ギャン妻の多くが繋がり続けます。
そういう視点、一切入っていないのも驚きです。

この第一段階後、安心安全を確保したら心に少し余裕を持てます。
そしたら第二段階では、自助グループや家族会に繋ぎ、十分癒されるべきです。
その前から繋いでももちろんいいですが、
やはり自助グループは、医療・行政のお膳立てしてあげるプログラムとは全く違います。
家族に力がつく事間違いないです。絶対に繋いで下さい。
そしてこれまでの問題を振り返り、頑張った自分をほめ、共感して貰い、
さらには考え方のクセを変えていくのです。
この癒しのプロセスがとても大切です。

繋がらないと言ってる医療行政の人は、自分の腕が悪いと思って創意工夫して下さい。
繋がる援助職は、繋がるのです。
地域の信頼できる自助グループや家族会の方と密な関係になることをお勧めします。
そして、その人に繋げてしまうのが、一番楽かと思います。

そして、最後、第三段階がコミュニケーションスキルです。
今、大流行しているプログラムですね。
これは自助グループで、回復してきた人には絶対効くでしょう。
そして当事者を繋げる確率が上がるはずです。

自分の安全と、自信をしっかり取り戻さないうちに、
おっかなびっくりコミュニケーションスキル磨いてたって、
それはただ単に相手の顔色を見ているだけになってしまいます。
それより自信を持ってコミュニケーションを変えられれば、精度があがるはずです。

しかも私、なんとなく思ってるのは、このプログラムの伝え手の援助職の皆さん自身が
あんま自信をお持ちじゃないんですよね・・・
だから地域に居る、我々家族の仲間と連携しながらやって貰う事をお勧めします。
なんなら私が行きますよ!

ってなわけで、驚くほどギャンブルの視点がないプログラムが蔓延しているので、
各地でやっている、今のギャンブル依存の家族支援見直して欲しいです。
家族プログラムは三段階にわけ、行って貰いたいです。
どこかの地域で、ご一緒にプログラム作ってやらせて頂けませんか?
もう構想はできているんです。協働先募集中です!

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現在国内の推定罹患者320万人(2017年厚労省)のギャンブル依存問題。
日本でもギャンブル依存症対策の導入を!

[田中紀子の著書]
三代目ギャン妻の物語(高文研) ギャンブル依存症(角川新書)

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