日本のハームリダクションってなんなのか?です

公開日:  最終更新日:2018/10/18

皆さん、最近ハームリダクションって話を良く聞くかと思いますが、
それって何なのさ?と思われている方も多いはず。

全く、この業界以外の方だと、初めてそんな言葉を聞いたわ
と言う方もいらっしゃるかと思いますが、例えばオランダの薬物政策で、
依存症も大問題だけど、そう簡単にみんなが止められる訳じゃないから、
せめて回し打ちによってエイズになってしまうことを避けるために、
注射針を配って、そこで薬物を注射して貰おう!
なんてことやってるんですよねって話は聞いたことがあるのではないでしょうか?
簡単に言えばあれですあれ。

つまり依存症のハームリダクションとは、
ただちにはやめれないんだけど、やめられないことによっておこるリスクを
できる限り減らせるようにしましょう!ってことなんですね。

で、日本でいきなり「じゃぁ注射針配りまっせ!」なんて、できないじゃないですか。
そこで日本のハームリダクションに必要なことってなんなのさ?
ってことが今の我々依存症業界人が知りたい事な訳ですね。

で、きのうはその国際セミナーがあって
医療者に知ってほしいハームリダクション

ご登壇者が、
ミナミ オサム(Centre for Addiction and Mental Health)
古藤吾郎(特定非営利活動法人 アジア太平洋地域アディクション研究所)
司会 : 松本俊彦(国立精神・神経医療研究センター)
というので、これは行かねば!とはるばる、小平まで出かけていったわけです。

で、色々モヤモヤしていたことが、解明された点がありますので書きますね。
まず、このハームリダクションの活動って、
当然ですが薬物依存症問題に関わって来られた方々の中で広められている訳ですね。

で、薬物依存に関わって来られた方々が、日本の一番のハームリダクションってなんなの?
って考えたら、それはもう「非犯罪化」なのだそうです。
それはもうめっちゃ納得しますよね。

ギャンブルだってそうですけど、せっかく依存症の回復施設に入ったりとか、
GAに繋がったのに!ってここまでとんでもなく苦労したのに、
過去の窃盗や万引きなどのことで逮捕されちゃって、回復のレールに繋げたのが台無しになる!
みたいなことがあるんですよね~。そりゃもうがっくりきます。
ただギャンブルの犯罪の場合必ず「被害者」があるわけですから、それは致し方ないと思っていますが、
薬物の自己使用の場合、被害者なき犯罪な訳ですから、
それは刑罰じゃなく、治療のレールに載せることを第一優先にしましょうよ!って思います。

そうしないと刑務所に入っちゃうと、これまでの援助に繋がろうとしていた人間関係も途絶えちゃうし、
何よりも刑務所で依存症という病気は治らない訳ですよ。
だから再犯率が高い。むしろ一定期間「がまん」させることで、
欲求が高まっちゃうわけですよね。

でもそう言うと「薬物やってる人は反社会勢力に資金提供している」と、
怒りだす警察関係者とかいるらしいですが、そんなん聞くと
「反社会勢力を取り締まりきれずに、市民に悪影響を与えている警察の責任はどうなんのさ?」
と思っちゃいますけど???違うんですか???

だってこの世の中「オレオレ詐欺」に資金提供してる人、
どんだけ注意勧告されたって沢山いますよね?その人達犯罪者ですか?
薬物についてどれだけ注意勧告されてたって、
最初の一発を言葉巧みに「痩せる薬だよ」「元気が出るよ!」なんて言われて、
騙されてはめられちゃってる人だって沢山いますよね?
現に私なんかバリ島で遊びまくってる時に
「眠くならないで遊べる安全な薬だよ」って変な錠剤見せられたことありますよ。
あたしゃ医者嫌いで薬も嫌いなので、そんなん飲んだりしませんけど。

とつい文句に話がそれましたけど、つまり今薬物政策で一番のハームリダクションっていったら
「自己使用の場合の非犯罪化」それはもう実に納得で、是非そうなって欲しいと思いますね。
犯罪者とレッテルを貼られてしまうと、そこからの社会復帰はとても難しくなります。

清原さんをみて頂ければお分かりの通り、あんなに叩かれたら孤独になって、
回復に希望が持てなくなっちゃいますよね。
現在、ウツで苦しんでおられるとおっしゃってましたが、
ホントやったことに対して失ったものが大きすぎると思います。

さてもう一つ、今すごく気になっているのが、
果たして「節酒」ってハームリダクションなの?ってことなんです。

今、この業界では「節酒」ブームじゃん?って私なんかは思っていて、その理論が、
・これまでは断酒一辺倒だった
・そのためには底つき理論がまかりとってきた
・資源として自助グループしかなかった
ってことなんですね。
だから断酒、断薬のみの自助グループ以外のものも作ろうよ!
ってのが医療やセンターの動きになっています。

で、私なんかが聞いてると時々、自助グループが全否定されてるように聞こえちゃうんですよね。
今でも自助グループや回復施設は、断酒・断薬で底つき理論でやってるわけですよ。
でもそれで上手くいった人が、別に今だって沢山いることも事実じゃないですか。
それをいきなり医療で「節酒で」とお勧めされたら、自助グループ潰れんじゃん?と思ってる訳ですね。

で、結果から言うと「節酒」もハームリダクションと言える。
但し、玉虫色というか、「節酒」=「ハームリダクション」と言って、
前面に押し出すものではないってな感じでした。
難しいっすね・・・

但し、方向性としては、自助グループと相反するものではなく、
節酒の先に断酒があったり、断酒で行く人には断酒をもちろんお勧めするとか、
つまりその人に合わせたオーダーメイドでいくってなことで、
競合ではなく協働であり、WinWinの関係にあるものなのだそうです。
欧米などでもハームリダクションのために、12ステップが潰されたりってなことは、
起きていないとのことでした。

ここからは私の個人的な考えというか、お願いですけど、
私もハームリダクションには大賛成だし、
薬物の非合法化には、先頭に立って旗振って政治家にねじ込みたい位です。
だから協働させていただきたいと思っています。

但し、日本の自助グループは欧米社会の様に、一般化されてなんかいません。
そもそも知られておらず、また日本の中には「アディクションカウンセラー」という制度もありません。
行政などもでも、担当者がコロコロ変わり、3年に一度ど素人が専門員として、
相談業務にあたるのが現実です。

だからテキストなどの文字づらに残す時には、
細心の注意を払って、自助グループの否定に見えないようにして欲しいんですね。
正直、今書かれているものは結構傷つきます(笑)
もうちょっと表現方法を改めて頂き、
自助グループももっともっとおススメして頂きたいです。

でもそっからこぼれちゃう人がいるから、
そこなんとかできるようにしようよね!
くらいにして頂かないと、素人の援助者が担当になった時に、
ではまず節酒で!と決め打ちされそうです。

さらに、節酒路線は家族はめっちゃとらわれると思います。
ハラハラして苦しいと思います。
だから今でもないがしろにされ、本人を回復に導くために、
「管理監督しろ!」と、自分の人生を犠牲にすることを強いられている、
家族の支援をじゃあどうするのか?ということを、
まず絶対に考えて頂きたいですね。
これについては、また後日改めて書きます!

以上が、昨日の報告と言うか、個人的感想です!
その後、懇親会もあってとっても楽しかったです。

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現在国内の推定罹患者320万人(2017年厚労省)のギャンブル依存問題。
日本でもギャンブル依存症対策の導入を!

[田中紀子の著書]
三代目ギャン妻の物語(高文研) ギャンブル依存症(角川新書)

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