介入現場を直撃!ハートネットTVです

公開日: 

皆さん、明日のNHK Eテレ「ハートネットTV」にて、
私の日頃の現場に密着した、取材が放映されます。
シリーズ 依存症 第1回 ギャンブル依存症 —孤立する当事者と家族—

今回、依存症がシリーズで取り上げられており、
11/1は、クレプトマニア(窃盗癖)についてで、
松本先生が解説されます。
皆様、あわせて是非ご覧下さい。

さて、今回の取材、初めて私が介入している現場にカメラが入りました。
これまで何度も様々なTV局で、
「介入をとらせて欲しい」と言われて参りましたが、
私自身、それは無理だと、お断り致しておりました。

ただにわかに「ギャンブル依存症対策」が叫ばれるようになってきた現在、
「拠点病院を置いたり、精神保健センターで相談を受ければばよい」
どうもその程度の対策でアリバイを作ろうとしているのではないか?
という国の態度を危惧して、今回の取材をお引き受けすることに致しました。

もちろん拠点病院や、精神保健センターでの相談は必要ですし、
そのことは推進して欲しいですが、
わかりやすく、やりやすい対策だけとりあえずやれば、
もうカジノOK、既存ギャンブル対策OKというこの国の態度に、
腹立たしさと、恐ろしさを感じています。

ギャンブル依存症対策は、医者がちょこっと診たから、
精神保健センターで数回のプログラムをやったから、
治ってしまうような甘いものじゃありません。
それはほんの入り口にすぎません。

そして、そもそも入り口にすらたどりつけないのが現状であり、大問題なのです。
診察や相談に行くということが「否認の病」である依存症者とその家族にとっては、
最大の難関となっています。
そこにたどり着けないがために、家族は何年もいえ時には何十年も苦しむのです。

私たちがやっている支援の一つに「介入」という方法があります。
これは私たちが、ご家族から相談を受け、
特に、ご家族が暴力や暴言等で脅されて、
お金を奪われつづけてしまい、どうにもらちが明かない・・・
といった場合に行っている方法です。

簡単に言えば、家族の同意を得て本人と面会をし、
依存症の専門病院や回復施設、
場合によっては一人暮らしという独立の形につなげるという支援を行っています。

こう書くとすごく単純ですが、
実際にはものすごく緊張感があります。
当事者は「やめたくない」「やめられると思わない」「やめられない」
といった病気の声に引っ張られ、
「いよいよ、やめる時が来た」という現実が受け入れられず、
最後の抵抗を試みます。

わりとすんなり上手く行く時もありますが、
あ~でもない、こうでもないと言い合いになったりすることもあります。
包丁を持ち出されたことなどもあります。

ですから、介入は私にとっても気が重く、憂鬱な現場です。
しかも、その後たった一人で当事者を現地まで送っていっているのですから。

でも、誰かがこれをやらないと、本当に底なし沼のように、
家族が不幸になってしまう案件があるのです。
妻や親が支援をやめても、次は祖父母を脅しに行ってしまう、
先日起きた調布市の89歳の祖父を殺害した事件などは、
こういった事例にあたるのでは?
と思っております。

どこかで介入しなければならない案件がこの世には確かにあるんだ!
ということを知って頂きたくて、今回取材をお受けすることにしました。

そして、そういった可及的速やかに対策しなくてはならない案件ほど、
医療や行政からは置き去りにされている現実。
どうかそういったものに目を向け、知って頂けたらと思います。

この取材を受けるにあたっては、私自身も大変な勇気がいりました。
おそらく「後ろから矢が飛んでくる」と思ったからです。
医療者や行政は「そこまでやるべきではない」と言う方もいらっしゃるでしょう。

ただ私は、批判を恐れ、自分の保身に走るよりも、
介入によって平穏な生活を取り戻したと、
喜んでくれるご家族が沢山いること、
その事実を支えに、現実を知って貰おうと思いました。

過酷な現場、現実にご覧になった方がどんな風に思われるか?
受け止め方は人それぞれと思いますが、
これもまた真実なのだと、そしてこの真実を少しでも改善すべきと、
力を貸して下さる方々が現れてくれるよう願っています。

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現在国内の推定罹患者320万人(2017年厚労省)のギャンブル依存問題。
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[田中紀子の著書]
三代目ギャン妻の物語(高文研) ギャンブル依存症(角川新書)

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