ギャンブル依存症と医療の関係です

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ギャンブル依存症の問題に繋がって、
今年で12年に成りますが、私が繋がった頃と違い現在は、
関わって下さる精神科医の皆さまの数は圧倒的に増えたと思います。

そして、最近はそのことで少々困惑しています。

と、言うのも昔はもう関わって下さる先生の数も限られ、
その先生方の言うことが大体同じで、
ある意味安心感がありました。

お医者さまも自助グループのことは信頼してくれて、
皆さんせっせと「自助グループに行きなさい!」とか、
「そんなのスポンサーに聞きなさい」なんて、
背中を押して下さっていました。
割とタフラブ的に。

私も最初に繋がったドクターに
「ここに来ても仕方ない。自助グループに行きなさい。
行かないと回復しないよ。」と言われ、
「あっ!そうなんだ。じゃあ行ってみよう。」ってな感じで、
情報提供して頂いたので、あっさり繋がれたんですね。

ところが、最近の先生方の中には、自助グループよりも、
ご自身の診療室の方に囲い込まれてしまうケースが多くなり、
とても困惑しています。

クリニックで何回連続講座みたいになっているので、
それを受講したら「はい、おしまい」ってな感じで、
結局自助グループには繋がらず、かえって本人は
「もう治った」と言いだし、益々否認してしまった・・・
などという話も聞こえてくるようになりました。

そして、現在何よりも困り果てているのが、
最近、ギャンブル依存症の診療を始めた先生方が、
「家族がお金を管理しろ!」と言いだしたことです。

アルコール、薬物を専門にして来られた先生が、
最近ギャンブルも診て下さるようになったり、
これまで全然依存症のことなどやっていなかった、
メンタルクリニックの先生方が診察を始めたりされているのですが、
そういう先生方は、我々との繋がりが殆どないので、
現場のセオリーを全くご存じないのです。

私は、ギャンブル依存症を診て下さるドクターに強く申し上げたいのです。
「家族が本人のお金の管理をすることほど、
家族を疲弊させ、ストレスにさらさせるものはないのです。」と。

これをやっている限り、家族は恐れや不安から抜け出せず、
共依存という、時には人を死に招く強靭な病から、
逃れられないのです。

発達障害などの、重複障害があれば別ですが、
そうでなければ、本人の問題は本人に返し、
自分達の生活費に関してはきちんと家族が管理し、
それ以外の借金の返済だとか、携帯代の支払いなど、
自分のことは自分でやって貰ったほうが良いのです。

家族の側がストレスから解放されるだけでなく、
結局こうして本人の責任を本人に返したことで、
ギャンブラーの回復にも繋がってきました。
それを多くの仲間が体験してきたのです。

ですから我々家族の仲間は、
「お金の管理なんてやめなよ。毎日1000円ずつ渡したって、
借金する時はするし、ギャンブルやる時はやるって。
でも、余計なお金をこっちが出さなきゃ、
家族のお金は守れるし、本人も底つきするよ。」と、
ビギナーさんに伝えるわけです。

でもそれは当然主治医とは意見が違う訳です。
すると最近では主治医が
「仲間の意見に振り回されすぎ。自助グループに行くのをやめなさい!」
と言い出すようになり、大変驚いております。

私たちは傷つくばかりか、
それでは絶対に上手くいかないことを、さんざん経験している訳ですから、
みすみす仲間が不幸にならないよう、
軌道修正させるために、ものすごい労力を使わなくてはなりません。
時にはもう修正は不可能になります。

一時期、ギャンブル依存症=発達障害という旋風が吹き荒れ、
当事者をまだ診察してもいないのに、
家族の話だけでなんでもかんでも発達障害と診断された時代がありました。
あげくその時も「自助グループに行くな」という話をされ、
我々は大変憤慨したものでした。

やっとその旋風も終息し、
そんなになんでもかんでも発達障害ではない・・・
と、様々なお医者様やコメディカルの皆さまも言って下さるようになり、
ホッとしたのもつかの間、
今度は、「ギャンブル依存症をもっと医療が診るべき」と、
IRを契機に言われるようになったことから、
あんまりギャンブル依存症のことをご存じないお医者様が、
あっちゃこっちゃから出現しました。
そして「お金の管理をしろ」と、これまで私たちがやってきたことと、
真逆のことを言われだし、我々現場は大変困惑しています。

こうして医療とギャンブル依存症は、
度々受難の時代を迎えています。

もちろんずっとずっと自助グループ用語で言う
「我々の良き友人」であり続けて下さる、
お医者さまもいらっしゃいますが、
必ずしも皆そこに繋がる訳でもなく、
良いドクターの惹きつける魅力よりも、
宣伝に惹きつけられる方がずっと多いのです。

人はお医者様という権威に弱いものです。
ましてや自助グループなどという組織ですらない、
無名の集団のことなど、最初から信じられるものではありません。

だからこそ、世間的に信用のある、お医者様やお役所や、
その他様々な権威や肩書きを持つ人たちが、
自助グループを推薦して欲しいし、
迷い、おびえ、不安でいっぱいのビギナーたちの、
背中を押す役割をして頂きたい、
そして私たちと良い協力関係であって欲しいと願っています。

依存症の回復に、自助グループはとても大きな役割を果たしてきました。
私は、必要不可欠だと思っています。
繋がり続けてきたことに後悔などしたこともなければ、
これからもずっとずっと通い続けようと思っています。
依存症者には、自助グループの仲間達という、
かけがえのない生涯に渡る支えが必要です。

一人で生きていくには、この病気はしつこすぎ、重すぎて、
無理があると思っています。

そして家族は、依存症者の犠牲になるために生まれてきたわけでも、
誰かの管理監督者として生きている訳でもありません。
そんなつまらない、重荷を背負った人生を歩みたくはありません。

先生方、ギャンブル依存症は理解しにくい病気で、
アルコール薬物より甘くみられるのかもしれません。
でも、重篤さは変わらず、基本は同じなのです。
家族も自助グループの支えが必要だし、
家族が管理監督することなど無理な話なのです。
できっこありません。
出来ないことでやがて絶望してしまいます。

家族は家族で、仲間に支えられ、
自分の人生を生きる・・・
結局それしかないのです。

そもそもギャンブル依存症にそれほど医療は必要ないと思っています。
お医者様が囲い込むことで、
医療費があがり、社会のためにもなりません。
重複障害や他の精神疾患がない場合は、
ます自助グループへの動機づけをして下さい。

どうか私たちと「良き友人」関係となり、
そして社会の好循環を生み出し、
一人でも多くの回復者を出すよい協力関係を結ばせて下さい。

私たちを否定せず、私たちが長年の経験から培ってきたものも、
大切にして頂き、私たちの声に耳を傾けて頂ければと、
心から願っております。

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現在国内の推定罹患者536万人(2014年厚労省)のギャンブル依存問題。
日本でもギャンブル依存症対策の導入を!
ギャンブル依存症対策を求める10万人署名プロジェクト

[田中紀子の著書]
三代目ギャン妻の物語(高文研) ギャンブル依存症(角川新書)

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