禁止にすればいい!は安直な考えです

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時々ギャンブル依存症対策を訴えていると、
「ギャンブルを全部禁止にすれば良い!」という極論に出会います。
これはギャンブル依存症者のことを全く分かっていらっしゃらない方のご意見です。

昔から言われているように、「飲む、打つ、買う」は、
ある種の人間にとっては切っても切れない性なのです。
おそらく全世界探したって、
この3つの禁止に成功した国などないのではないでしょうか?

「禁止にすれば、闇に潜る」人類はそのイタチごっこを、
聖書に書かれた時代から繰り返しているのです。

もしもギャンブルが、全面的に禁止されたら、
ギャンブルをやった人間は犯罪者になるわけです。
アルコールが禁止されたら、お酒を飲んだ人は犯罪者です。
そうやって追いつめることで、よい結果が生まれると、
皆さんは思われますか?
アメリカの禁酒法はどんな結果に終わったでしょうか?

特にギャンブラーは、いわゆるギャンブルと言われるもの以外、
例えば、株や、先物や、為替や、FXなどをいっくらでも、
ギャンブルにしてしまうことができます。
そして今でも闇のギャンブルなどいくらでもあります。

もしギャンブルが禁止となれば、
そういった人達の救済も一切できなくなります。

ここに2015年の興味深い記事があります。
「禁酒国」イランの皮肉な現実

どうですか?皆様。
宗教的にも道徳的にも、非常に厳しいと思われるイランの現状がこれです。
むしろ怪しげな密造酒を飲んでいる訳ですから、
人体へのリスクは益々高まり、闇組織の資金源になります。
厳罰化は逆効果にしかなっていません。

アルコール依存症施設150カ所って、
どれだけ深刻な問題になっているかが分かりますね。
依存症問題でスティグマを強めていくことなど、
効果ないと人類の長い歴史が物語っています。

で、頭に柔軟性のある方が多々は考えたわけです。
禁止してもダメなら、なるべくリスクを減らす方向で、
考えていくしかないよな・・・と。

その中でも最も先駆的で、ぶっ飛んだ対策を立てたのがポルトガルです。
なんと、大麻から覚せい剤まで、全部「非犯罪化」しちゃうという政策をとり、
その代わり依存症者を追い詰めない、孤独にしない、社会に居場所を作る
ってことを、全力でやったんです。

「依存症患者を世の中から隔離して来た、これまでの対策費の全額を、
依存症患者を社会に復帰させるための財源として使う。」
裁判やったり、刑務所に入れたり、その他もろもろの、
違法だってことにしたら、かかる費用をぜ~んぶ社会復帰費用にしちゃったんです。

するとどうなったか?
なんと薬物乱用者が50%も減っちゃったんです!
(最初は一時的に増えたけど、後に減少していきました。)

すげ~ポルトガル!って思いません?
他国では、こんな法律ビビって作れないですよね。
「国中、薬物依存症だらけになっちゃうんじゃないか?」って、
思っちゃいますよね。
まっ!でも、私が総理大臣になったら、導入検討しますけどね(笑)

と、こんな風に柔軟な現実に即した対応をしていかなくっちゃ、
「禁止と言ったら禁止」「違法なものは違法なんだ!」
と言い張ってても、何の役にもたたないじゃないですか。
だから~、ずっと禁止してっけど、改善されないんだから、
コペルニクス的な発想の転換が必要じゃないっすか!ってことですよね。

そういうことを声高に叫びたい人は、
そういう清く正しく美しいことを言ってる自分が好きか、
安全パイなことしか言えないか、
そもそもその問題についてよく分かってないか、
のいずれかだと思うんですよね。

だから私たちも「薬物報道のガイドライン」を作った訳ですけど、
こういった世界のエビデンスを取り入れた、
先駆的な取組みに全くついていけない人っているんですよね。

今からそんなに頑固な固定観念にとらわれてると、
老後はどうなっちゃうのか?と老婆心ながら心配になります。

しかも現在の日本なんて、厳しく規制をかけなきゃいけないのは、
アルコール、薬物、ギャンブルを供給する側なのに、
全く逆のユーザー側を取り締まっているんですからね。
どうかしてますよ!

薬物依存症の治療と称して、精神薬ジャブジャブ与える精神科医なんて、
いっくらでもいますからね。
そこから精神薬依存になって、亡くなった仲間達だっています。
そういった医者にはおとがめなしです。

パチンコなんてもっとひどいです。
「自分たちはギャンブルじゃない遊技だ。」と依存症対策から逃げた上に、
遊技をこえた不正改造を施し、それでも一切おとがめなし。
台を撤去させただけですよ!
パチンコで何人死んだと思っているんでしょうか?

それに対して、薬物の自己使用ばかりなんで、
犯罪者扱いで「厳しくしろ!」「こらしめろ!」
って言われなくちゃならないんでしょうか?
どっちが罪重いのさ?と聞きたくなりますね。

大体そういう綺麗事を声高に叫びつつ、自分にはめっちゃ甘い人、
私は何人も知ってます。
TVのコメンテーターや、ネット民なんかそんな人ウヨウヨしてますよね。

「禁止」「ダメなものはダメ」なんて、依存症対策にならないです。
益々スティグマを強め、社会に居場所がなくなるだけです。

どうぞ現実を鑑みて、頭を柔らかくしてお考え下さいね!

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現在国内の推定罹患者536万人(2014年厚労省)のギャンブル依存問題。
日本でもギャンブル依存症対策の導入を!
ギャンブル依存症対策を求める10万人署名プロジェクト

[田中紀子の著書]
三代目ギャン妻の物語(高文研) ギャンブル依存症(角川新書)

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