ギャンブル依存症罹患率についてです

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シンガポール視察で、特に印象深かったことの続きです。
日本のギャンブル依存症罹患率は、国民の約5%で、
536万人と言われておりますが、IR関係の人たちは、
「そんなに多くない」としきりに言っておられます。

この数字に関しては、確かに多めかな・・・とは思いますけど、
最近になって「ギャンブル依存症」という言葉が、
メディアに頻繁に取り上げられるようになり、
また、私たちも全国で講演させて頂く機会も増えたことから、
とにかく繋がってくる方々が増えているので、
やっぱり病気が理解されていなかっただけで、
実際に困っている人は思った以上にいるのかもしれない・・・
というのが現在の実感です。

なんせ私が自助グループに繋がった頃など、
都内に夜のミーティングが1カ所しかなく、
それも3~4人で、細々とやってます・・・
みたいな感じでしたが、今じゃミーティング場は毎日どこかで、
一日数回開かれるようになり、更に仲間もいっぱいになりました。
昨日なんて、20人近くになってましたからね。時間が足りない位です。

で、何故日本のIR推進派の皆さんが、「シンガポールをお手本に!」
とおっしゃっているかというと、
シンガポールにはギャンブル依存症対策を統括している国の機関に
NCPGという所があるんですね。

で、このNCPGが依存症対策を強化していったことで、
シンガポールにカジノができて、
問題あるギャンブラー~ギャンブル依存症の罹患者が、
いったんは増加し、1.2~1.4%くらいまでに増えたんだけど、
それが今では0.2~0.5%にまで減りました!
ってなことを発表されたからなんですね。

この数字が独り歩きして「シンガポール方式なら依存症対策はバッチシ!」
ってな話になっていったんだと思うんですね。

で、このNCPGという所は、ギャンブル依存症対策を包括的に
取り扱う審議会のようなものなんですね。
ここで決めた方針が、各組織・現場に卸されていくっていうイメージです。
そこで発表されている数字が上記のものだったってことなんです。

それに対して、このNCPGの下部組織にNAMSという所があります。
ここは、大きな精神病院の中にあって、
依存症の問題を抱える患者さんを実際に診察している所です。
入院もやってますが、通院メインで、扱うメインプログラムは、
認知行動療法という、日本でもやっている病院プログラムと、
大体同じような感じです。

で、そこの方々は、
「シンガポーリアンは大体500万人位いるんだけど、
そのうちギャンブルに問題のある人は2~3%位と言われています。
でも、ここに相談に来る人は15000人位で、
まだ殆どの人は診察にためらいがあるんだよね~」
ってなことをおっしゃっていて、
いかにも現場らしい実感がこもったお話しなんですよね。

NCPGの方に、「シンガポールでもギャンブル問題での自殺はありますか?」
と伺ったら「う~ん、あんまり聞かないわね」ってな感じでしたが、
NAMSの方に伺うと「もちろんシンガポールでもありますよね」と即答でした。

つまりNCPGって、厚生労働省みたいなところで、
NAMSが、国立の精神病院みたいな関係なんだと思うんですけど、
官僚は、ギャンブル依存症で人が毎年亡くなっています、
なんてことあまりご存じないじゃないですか。
ろくすぽ統計すら取ってないってことは、
その必要性さえ感じてない訳ですから。

でも、現場は「これ大変な問題だよ。なんとかしないと」
って思っている訳で、
それは各国共通だなぁ~と思ったんです。

韓国で同じような施設を視察した時に、
日本では、韓国の罹患率は2%以下と報じられていますが、現地の方は、
「韓国は公営ギャンブルが7つもあって、罹患率は5.3%位になりますね~」とおっしゃっていて
「あぁ、やっぱりこれだけギャンブルが蔓延してるんだもん。
日本と同じくらいにはなるよね・・・」と思ったんですよね。

結局ですね、罹患率なんて絶対的に正確なもの!
なんて出せっこない訳ですよ。
だからその数字にこだわったってしょうがないですよね。
大事なのは「苦しんでいる人たちがいる」という事実であり、
それは現場がある限り、隠したり、ないものにはできないんだ!
ってことなんですから。

なんか日本ではこの数字のマジックにこだわって、
大したことがないように見せたい!
ってな人たちがギャンブル産業側や、
ギャンブルに関係するお仕事をされている方々に多くて、
とっても嫌な気分にさせられることがしばしばです。
数が少なければ無視できるとお考えなんでしょうか?
と聞きたくなりますね。

人間としてのそういう考えってどうなの?
ってホント疑いたくなりますね。

いずれにせよシンガポール視察で現場の声を拾えたことは、
とても大きな収穫だったなぁと思っております。
どこの国だって依存症対策は簡単になんかいきやしないし、
どこの国だって現場は苦労しているんですよね。

そういう意味で「やっぱ仲間だなぁ」とつくづく思えて、
日本も頑張ります!各国で良いものを検討していきましょうね!
という気持ちになりました。

しかし、こういう視察って、どういう立場の人が、
どんな風に聞くかによって、レポートは全然変わりますね。
だから自分でやる!ってことが大切なんだなぁと思いました。

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現在国内の推定罹患者536万人(2014年厚労省)のギャンブル依存問題。
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[田中紀子の著書]
三代目ギャン妻の物語(高文研) ギャンブル依存症(角川新書)

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