あるギャンブラーの孤独死です

公開日:  最終更新日:2017/04/30

本日未明に父が亡くなりました。
享年82歳。
誰に看取られることなく、たった一人病院で亡くなりました。
ある意味、父にふさわしい最期だったなぁと思います。

今週の頭に、病院から
「もうそろそろ意識がなくなるかも。
娘さんのことが分からなくなるかもしれないので、早く会いに来て下さい。」と、
連絡がありました。
とはいえ、私は関西出張中でしたので、
「すぐには無理です。なるべく早く伺います。」と答えました。

そして本日、日付が変わった頃、電話が鳴り「お父様が危篤です。」
と病院から連絡がありました。
と言われても、すぐに行ける距離でもないので、そう伝えると、
「では、ご家族に看取られなくてもよいですね。」と言うので、
「結構です。」と答えました。

私の答えを待つように、わずか5分後に、
「只今、お亡くなりになりました」と再び電話がきました。
私は「あっ、そうですか、色々有難うございます。」と答えました。
特に感慨もなく「あっ、行くの間にあわなかったなぁ。」と、淡々と思いました。

しかし、そこからが思ってもみない展開でした。
病院が、遺体をこのままにしておけないので、すぐにでも葬儀屋に連絡して、
引き取って欲しいとのこと。
「えぇ!そんなのどこに頼んだらいいか?病院のお付き合いある所で・・・」
ってなことで、葬儀屋さんの電話を聞きました。

でも、以前のブログや拙本に書いたように、
個人的な悩みです
祖父・父・夫がギャンブル依存症「三代目ギャン妻の物語」
父には現在親族がいるのかいないのか?
誰も父とは「一切関わり合いになりたくない」と言っているとのことで、
詳細が分かっていません。
果たして、これって私がやることなの?という疑問がありつつ、
でも、病院にはせっつかれるし、仕方なく葬儀屋さんに電話をかけ、
どうなるかわからないけど引き取って欲しい旨伝えました。

葬儀屋さんも私の事情を聞き、戸惑っていましたけど、
とにかく今晩は引き取ってくれるということになりました。

そして本日、午前中の予定をこなした後、父のいる市へ行って参りました。
結局、市役所では詳細が分からず、親族の件は不明のまま。
病院、葬儀屋さんから早く来てくれとガンガン電話がかかる中、
「だって、親族がいるかもわからないのに、私が荼毘にふして良いわけ?」と迷いがあり、
市役所で相談するも、たらいまわしにされたあげく、
市役所も教えられない、分からない、何もできないの一点張り。

ついには、「お骨にしたら、市の無縁仏で一時預かりはできる。
その間に、親族とお墓を探してはどうだ?」という案で決着し、
とにかく私が葬儀をすることにしました。

病院で荷物を引き取って、必要な書類を受け取りましたが、
衣類等は「捨てて欲しい」と言ったら、
「えぇ~!?普通は皆さんお持ち帰り頂きますが・・・」と困惑気味。
「いえ、普通じゃないし、特に愛着もないので、捨てて欲しいのですが」
と申し上げると「じゃぁ、まぁ、わかりました・・・」と言う感じで、
しぶしぶ受け取って下さいました。

最期の清算をすますと、病院の会計の方がやけに神妙な顔を作って
「この度は・・・誠にご愁傷さまで・・・ごにょごにょ・・・」というので、
「あっ!どうもありがとうございました!!!」と明るく言って、さっさと退去しました。

その後、葬儀屋さんにつくと、ものすごく小さくなった父が安置されていました。
誰にも看取られることなく、
何の因果か、40数年もの間、生き別れていた娘の私だけが、
父の遺体にたった一人お線香をあげた人となってしまいました。

「しょうがない、多少持ち出しになりますが、
市役所でもどうしようもないとのことなので、私が葬儀を出しますわ。」
と言うと、葬儀屋さんに心からホッとされました。

「でも、本当に一番安くして頂きたいんです。戒名もなんもいりません。」
と言うと、葬儀屋さん「骨壷も小さくて良いですか?」なんて節約してくれるので、
なんだかおかしかったです。

父の遺体の前で、葬儀を値切りつつ、父がギャンブル依存症で、私が2歳か3歳の頃、
会社のお金を横領し、そこから生き別れたのだとか、そんな身の上話を明るく話すと、
葬儀屋さんも大変びっくりされていました。

「こんな人他にいました?」と伺うと、
「いえ、初めてのことです・・・」と同情してくれて、
「ドライアイスは1日分でなんとかしましょう。」
なんて益々節約してくれました。

「明日は、私、お骨拾ったりしたくないです。
お骨になったらそれ取りに来ます。いいですか?」
と伺うとそれでOKとのことだったので、心底ホッとしました。
あとは、市の墓所に預ければ、とりあえずなんとかなります。

帰り道「あ~、疲れた~」と思い、一人ファミレスに入りました。
父の病院から持ってきた、書類や貴重品を整理すると、
残されたお金が大体ちょうど葬儀代になることがわかりホッとしました。

そしてさらにがさごそと見てみると、なんと借金の督促状がありました。
金額をみてみると・・・ひぇ~~~~~~1400万!
(元金300万で、遅延損害金が1100万、およそ10年放置状態)
やるなぁ~!
さすがは、ギャンブラー。
やっぱ私の父親だけあるわ~!

お父さん、最後まで面白いネタを提供してくれてありがとう!
この時ばかりは、あまりに出来過ぎのオチに、思わず笑ってしまいました。

これで、相続放棄の手続きという経験もできますし、
あの父親が、唯一私に父親らしいことをしてくれたとしたら、
最後の最後まで、ギャンブラーに関わる、あらゆる経験をさせてくれたこと。
仕事柄、あなたの残してくれた面倒な問題は、まさに財産ですわ。

ここまで期待を裏切らないでくれると、ホントなんだか愛せてくるから不思議ですね。
なんか家に帰ってきたら、すっかりほっこりしてしまって、
母に父が死んだことを伝えてみることにしました。

まさか6年前から連絡とっていることなどは話しませんが、
「今日さ、父親死んだってよ。だれも看取らないから私に連絡来たわ。」
と言ったら、びっくりしてました。

「明日さ、火葬にするんだけど、私は立ち会わないつもりだったんだけど、
あなた顔みたい?12時半迄に行けば間にあうから、見たけりゃ連れてったげる。」
と言うと、「いやいやいや行かないわよ~。もう沢山!」と即答。

「でもなんであんたに連絡来るの?」と言うから、
「なんか借金だらけで、親族誰も関わりたくないんだって」と言うと、
「やっぱりね~。じゃあ治ってないのね~!」と、
めっちゃ嬉しそうな、勝ち誇った満面の笑顔を見せていました。

お母さん、そう!あなたは賭けに勝った!
離婚してくれてありがとう。
口には出しませんが、私も心からそう思いました。

たった一人、誰にも看取られず、親類じゅうに愛想を尽かされ、
ギャンブル三昧のあげく、1400万もの借金を残し、
葬儀の段取りまで、あっちゃこっちゃで押し付けられ、
厄介者扱いされて、孤独に死んでいった父親。

なんの因果か、全く世話にもなっていない父親の、
最期の尻拭いをする、私。
こんな良くできた話ってあるでしょうか?
だって私はよりによって「ギャンブル依存症問題を考える会」の代表なんですよ。
全くもって、神様の計画には1ミリの狂いもない!
思わずすがすがしい気持ちになりました。

お父さん!安らかに眠って。
あたし最初で最後の尻拭いしたげるから。

お父さんがくれた色んな苦労のお陰で、
あたし今、社会貢献させて貰ってる。

だからこんな貴重な経験をくれたあなたに感謝を込めてお線香たてたの。

最後の最後まで、本当に面白かった!
ありがとう!
じゃあね~、バイバ~イ・・・

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現在国内の推定罹患者536万人(2014年厚労省)のギャンブル依存問題。
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[田中紀子の著書]
三代目ギャン妻の物語(高文研) ギャンブル依存症(角川新書)

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